農家意見交換会の会議録

2009年度、教育GP酪農学園大学シンポジウムの記録

2010年度、教育GP酪農学園大学シンポジウムの記録

 
上島さんの報告





猫本 健司 (司会・酪農学園大学)
お忙しい中、お越し下さりありがとうございます。これより、農家意見交換会を開催いたします。


<開会の挨拶>
猫本 健司 (司会・酪農学園大学)
本日は大変お忙しい中、遠方までお集まり下さりありがとうございます。後期の長期実習が終了し、後期におきましても学生が大変お世話になりありがとうございました。
今日はじめて、3地区(鹿追、足寄、浜中)の農家の方々・農協・役場にお集まりいただき、意見交換会をできる運びになりました。以前からこのような機会を持ちたいと思いながら、予算の関係でなかなか実現できませんでしたが、今回、文部科学省の通称、教育GPと呼ばれる「質の高い教育」の採択を受け、ようやく実現ができました。
教育GPに採択されたことは、大学としても大変名誉なことです。他の大学はいろんな形でアピールに使っているようですが、まずは皆様にお集まりいただいて、日頃考えているお話を聞かせて頂くことが大事だと考えました。来月、日本畜産学会の前段に行われる私立大学教育研究会で、この実践酪農学について話をさせていただくことになり、5年目になってようやく色々なところから注目して頂けるようになったのかと思っています。
昨年はこのコースから5人が卒業し、今年は7人が卒業予定です。卒業した学生や実習から戻ってきた学生の話を聞くと、やはりこの実習をして良かったと感じてくれています。私自身、このコースを立案したときに、実際に農家で作業をさせてもらい、体を動かして学ぶことが大事だと思っておりましたが、その素晴らしさを私自身が教えられているように感じています。現場で活躍できる人材を育てることが、我々大学の役割です。
このような意見交換をする機会はなかなかありませんし、今日は学生もいませんので、皆様の忌憚のないご意見をお聞かせいただき、来年以降の運営の参考にさせていただきたいと思っています。

 

高橋勇 (浜中町農業協同組合参事)
はじめまして、高橋と申します。実践学の第1期より大学から声をかけて頂き、3軒の農家さんで継続して受け入れしております。当初は手探りで色々と課題もあり、地域でお集まりいただいて何回かミーティングをしてきましたが、今回は他の地域の方と意見交換させていただき、非常にありがたい機会だと思っています。今後とも学生がたくさん学べる機会をつくりたいと思います。まだ卒業生は5名とのことですが、社会に出てからこの子はちょっと他の子とは違うね…などと評価されたら受け入れ側としてありがたいですし、その子たちが10年20年後に色々なところで活躍してくれたら、うちらのような田舎に来て  
学んでもらった成果が出るのかな…と期待したいと思います。
今日は浜中町の受入農家4名と、事務局のJA職員と参加しておりますので、色々勉強させていただきたいと思います。


上村利一 (鹿追町農業協同組合営農部長)
鹿追農協の上村と申します。今回は一緒に学生を受け入れしている浜中さん・足寄さんと意見交換が出来る機会ですので、皆さんのお話を聞いて勉強させていただきたいと思います。
今日は私と担当職員1名、受入農家5名で参加しています。平成13年にファーマーズスタッフという農家10名の組織ができ、経営規模拡大による雇用不足を補完し農業経営の合理化を計ることを目的としています。畑作1軒・酪農9軒による組織ですが、今のところ鹿追町では学生はすべてこのファーマーズスタッフで受け入れております。後期に実習した3名を含めて、今まで計20名の学生を受け入れてい
 
ます。多いところでは1軒で6名を受け入れた農家さんもあります。
今回は皆さんのいろんな意見を聞かせていただき、受け入れを継続していく上での参考にさせて いただきたいと思います。


坂本秀文 (足寄町役場)
足寄町役場の坂本です。もとは足寄開拓農協の職員で農協のことをずっと学んできま した。干場教授との縁で、学生を受け入れて3年目になります。最初の頃はどうなることかと心配していましたが、受入農家もうまく対応ができて、若者が入ると地域も活性化するし、 面白い事業だなと思っています。浜中・鹿追の派遣学生は各3名なのに足寄は2名なので、足寄の派遣数をもっと増やして欲しいという要請もあります。
実践学を相撲にたとえるなら、相撲ではいくら 理論を語っても勝負には負けてしまう…実践学もそういうものではないかと学生を通して
 
感じています。
足寄町では新規就農者受入施設(アパート)をつくり、夫婦2組、若者4名が4月から入居することができます。後継者育成やリタイヤ農家の 受け入れも含めて前進させていきたいと思っています。
足寄町は十勝の中でも山間部ですので、草地もひょうたん型など様々であり、鹿追さんのように大規模にはできないのですが、小中規模で細々とやっていければ良いという地域ですので、今後ともよろしくお願いします。


◆<各町の取り組みの概要>

1.学生のスライド報告
実習参加学生のスライド報告を大学が紹介しま した。
◇東原君の報告<本誌 37〜39頁に掲載>
◇妹尾さんの報告<本誌 40〜42頁に記載>


2.鹿追町の取り組み概要(上村 利一)
JA鹿追町の取り組み概要を若干お話しさせていただきます。平成 17年から3名の学生を受け入れしました。鹿追町にお願いして公営住宅3戸を農協で通年借りています(4名の学生を受け入れた平成19年からは4戸を借りています)。住宅内には冷蔵庫・洗濯機・ガス台・電子レンジなどを揃え、学生は食器だけ持ってくれば生活できるように、生活備品はリサイクルショップなどで農協が揃えました。学生から家賃をもらうのは実習期間の8ヶ月分だけという事情もあるため、農政企画費用という予算を組んで、農協としてできることは学生にやってあげよう、という体制をとっています。農家から車を借りて、街の中から農家へ 通勤するという形式をとっており、結構遠い農家もありますので、出勤時間はまちまちになります。
仕事(朝搾乳など)が終わればいったん住宅に戻 り、また午後に出勤するという生活になりますが、 農家さんにも気を遣ってもらい、学生が勉強しやすい環境を整えています。学生らの休日は一緒に してもらい(後期は月曜日に統一)、週に一度は学生同士で食事をしたりする機会があります。集中 講義には農協も参加し、夜の交流会には畜産課の職員も積極的に参加します。


3.浜中町の取り組み(高橋麻衣子)
浜中町では、鹿追さんとは異なり、農家さんの庭先(農場内)にトレーラーハウスを設置していますので、学生はそこに住んでもらいます。車は農家さんが用意する場合もありますが、農協でも1台貸与しています。休日は農家さんと学生さんとで話し合って決めてもらっています。
1期生の後期から交換実習も行っています。つなぎ飼いとフリーストールの両方など、違う農家を体験してみたいという学生さんの意見を反映し てはじめました。短いときは1泊ですが、3日〜1週間と交換期間は様々です。強制ではなく、学生さんの希望に応じて行います。交換中はそれぞれの農家のトレーラーハウスに泊まってもらいます が、食事等はその農家のルールに従ってもらいます。例えば、完全自炊もあれば、朝晩一緒に食べる場合もあります。
集中講義では、特に農家の若い方に声をかけて参加してもらっています。交流会では青年部や女 性部などに声をかけ、なるべく若い人たちと意見交換できる形をとっています。


4.足寄町の取り組み(坂本 秀文)
私は役場に勤めて長くはないのですが、行政は 硬直化している傾向があって、当初は学生の住宅 問題が生じました。学校が廃校になった後の教員住宅に住ませようと議論したもののうまくいかず、最終的には町長の特別許可で、旧教員住宅への学生の居住が認められました。また、スライドに写っているように、新規就農者研修施設(アパー ト)を建設しており、夫婦向け2部屋、独身者向 け4部屋を確保しています。1億円位かかりまし たが、鹿追さんに負けないようにこのような施設をつくりました。足寄町へは近隣各町より、放牧酪農が楽そうだから…と実習生が流れてくる傾向 があります。土地が安くて手頃な値段で買えると いう事情もあると思いますが、考えが甘くて途中でリタイヤする方もいます。そのような中、町と しても担い手不足をカバーしなければならない使命がありますので、学生の実習や新規就農希望者を受け入れる体制を整えています。学生と新規就農者をイベントなどで交流させると非常に面白く、地域も活性化します。学生は違った観点から 農業酪農を見ていますので、我々としても勉強させられる点があります。2名だけでなく、5名位学生を派遣してくれると、もっと活性化しますの で、大学にはぜひ検討をお願いします。
実践は卓上の理論では成功しませんが、4ヶ月の実習はかなり良い経験になります。最初の学生 は車の事故を起こし、隠れて帯広の修理工場に持って行ってばれたことがありました。農家に言えずにこそっと直そうとしたわけですが、学生にとっては良い勉強になりました。酪農以外の面、特に人間形成にこの実践は重要だということが言えます。学問だけでなく、人とのつきあいが勉強できます。人や農家のそれぞれの特徴などをつかみ、得るものが多く、学生は成長して帰っていき ます。
2名だけにこの実習機会を与えるのはもったいないので、5名ほど派遣してもらっても対応できますので、ぜひよろしくお願いします。


◆<意見交換、質疑応答>

猫本健司 (司会)
意見交換・質疑応答のテーマについてご意見がありましたらお願いいたします。
1回目の意見交換テーマとして、「学生を受け入れて困ったこと」あるいは「こうしたらもっと良い実習ができる」という視点で行いたいと思います。まずは、農家さんからご意見をお願いします。


浅野澄夫 (鹿追町受入農家)
目的意識がはっきり感じられない学生がいる。 酪農家の後継者なら現場のことはある程度わかっているが、全く知らない学生は、1年生で行う予備的な1週間の体験実習を通して、長期実習に参加するかどうか判断しなければならない。もう少し体験実習の期間を長くすれば、学生としても実践コースに参加する明確な気持ちがあるかどうか 判断できるのではないか?。体験実習生を受け入れてみて、その学生が実践コースに参加したら、学生自身も受け入れる側も、共に苦労するのではないかと思われるケースが年々増えていると思う。


新名正勝 (酪農学園大学)
体験実習として1週間は中途半端な期間だと思うが、あまり長くできない事情もある。1週間〜10日間は、学生にとっては気が張ってすごく疲れて、 慣れて終わる、という期間である。短い期間であっ ても「自信を無くしたので長期実習はやめます」 という学生が出てくる。実体験を深めた方が送り出す側としても良いとは思うが、そういった事情もある(体験実習を長くすると実践コースへの参加学生が少なくなる)こともご理解いただきたい。


干場信司 (酪農学園大学)
学生の目的意識が十分かと言えば、送り出す側 としても首をかしげたくなる場合が無いわけでは ない。学生に甘いと言えば甘いのだろうが、チャレンジしてみようとする学生が年々少なくなってい る傾向もある。そういう事情があるため、協力していただく農家さんには申し訳ないと思っている。
実践コースには興味はあるが、どうしようか迷っている学生には、必ず1週間〜10日間の体験実習を行わせている。しかし、その短期実習でがっくりきた学生が多かったこともあって、昨年前期 は4名しか実践コースへの参加者がいなかった。
昨年は滝上町の協力が得られ、体験実習を希望 した学生らをバスで送迎してくれ、学生 11名をま とめて10日間受け入れて受入先農家も斡旋してくれた。受入式には町議会議長をはじめ農家さん 全員が参加してくれ、学生も印象を良くして帰ってきたためか、来年度の前期は8名の実践コース への参加が決まっている。
我々としては、実習でつらい思いをするのは当 たり前のことだと思っているが、本学の必須科目 である3週間の農家委託実習でも、逃げ出して途中で帰ってくる学生が年々増えている。情けないことであるし、大変残念だし申し訳ないが、年々、昔では考えられないことが増えているのが実情だ。 実践コースへの参加に関して、「本当にやる気があるのか」と個別面談をすると、迷いながら決めた学生ほど、結構一生懸命やってくれる傾向がある。


坂本慎一 (鹿追町受入農家)
酪農は技術を要する仕事であるため、短い実習期間ではあまり技術を要しない仕事を先に与えることになる。どうしても力を使ったり、体力的につらい仕事が先に回ってくる。まだ体も馴染んで いないこともあって、最初にそれを乗り越えられるかが問題となる。学生だけでなく、従業員でも 辞める人は1ヶ月位で辞めていく。体も慣れてコツが解ってくると、つらさを乗り越えて続けてくれる。最初は大変だよ…ということを学生にもも う少し認識してもらって欲しい。その部分でやる 気を失ったり、勤まらないという気持ちに陥ってしまうと、農家側としても新たなことを教える次 の段階に進むことができない。
今回受け入れした学生は本当にやる気のある子で、はじめからこの子は違うな、という目で見ていたが、実習が終わる頃になれば、繁殖台帳まで開いて色々質問してきたし、この牛は気になるので獣医さんを呼んだ方が良いですか?など、従業員でもなかなか気が付かないことが見えていた。 そういうやる気のある学生に対しては、レベルアップさせるために、次々教えていきたいという気持ちになる。
最初のつらい部分だけで、これが酪農だという捉え方をなるべくしないよう、それをうまく乗り越えられるように、事前に学校側は学生と向かい合って欲しいと思う。


坂本秀文 (足寄町役場)
参加学生に女性が多いが、コースへの参加を決める先生方からみて、何か理由はあるか?


干場信司 (酪農学園大学)
以前は男女半々くらいだったが、来年度は8名中7名が女子学生である。予測はつかないのだが、 女子学生の方が積極的であるのは間違いないと思う。


新名正勝 (酪農学園大学)
選考して女性を選んだわけではなく、希望者が女性だったということ。最近は女子の方がしっかりしている傾向はあると思う。


二瓶昭 (浜中町受入農家)
農家側の一方的な話になるかも知れないが、面接するときに、将来、@酪農家をやるのか、A酪 農関係の仕事をやるのか、B単にそれなりに体験をしたいのか、という話が出ると思うが、私としては将来酪農をやる、という意識の人の方が接しやすい。以前受け入れた学生は、やる気が本当にあるのか疑問を持つことがあった。次のステップに進めないので、それなりの接し方になってしまう。 搾乳や牛をおぼえるのに3ヶ月かかる学生もいれ ば、1ヶ月でわかる学生もいるため、学生にあわせて接しなければならないが、(意識が低い学生には)最終的には、怪我しないで無事に実習を終え れば良い、という安易な無責任になってしまう。
やる気があり目的意識がある学生には接しやすい。しかし、実習に来てすぐに、昆虫が好きなのでトンボを捕る網を貸してくれ、などと言われると困惑してしまう。将来酪農やるつもりでこのコースに入ったのか? 疑問に感じることがあるので、大学側も面談をきちっとやってもらえるとありがたい。


干場信司 (酪農学園大学)
学生との面談では、将来どうするかということも含めて話を聞いているが、今の学生にとって、 4ヶ月の長期実習に入ることは、一段階飛躍しており、崖から飛び降りるような意識といえば極端かも知れないが、それぐらいの気持ちでいる。甘い気持ちではないのだが、中にはそういう学生もいることは否定できない。
学生には、このコースに入ったら、将来農家で働かなければならないのかと聞かれることがあ る。我々は、農家でなくては駄目だと言うことで はない、でも、農業に貢献することはして欲しい、 現場に近いところで働いて欲しい、直接農業に携わって欲しい、という言い方をしている。
1期生の2名は現在大学院に進んでおり(農家をしているわけではないが)、長い目で見ると、その学生らが将来結婚して子供ができたとして、実践コースのあの経験が子供にどのように伝わっていくか?、かなり先の話ではあるがすごく大きな波及効果だと勝手ながら思っている。



坂本秀文 (足寄町役場)
実践酪農学は普通の大学とは異なり、現場で4ヶ月学ぶ。担い手不足の中で、新規就農者の受入という形の中でいろんな農家を回り、そして後継者がいない農家を継承する、ということであれば目的がはっきりする。そういう学生を選んでコースに入れて欲しい。
全道的にリタイアする農家が多い中で、この実践コースで学んだ学生が農家に入ってくれれば、 大学にとっても地域にとっても良いことである。 道にも担い手センターが公社の中にあるが、酪農学園大学としても、実践酪農学と新規就農者を結びつけるようなシステムをつくって欲しい。


干場信司 (酪農学園大学)
我々もそれを望んでいる(実践酪農学と新規就農者を結びつけるシステムにしたいと望んでいる)
実践酪農学コースに入らないで、就農を目指している学生もいる。違うやり方で、自分は自分で決めて実習に入るという熱心な学生もいる。


坂本秀文 (足寄町役場)
農家の親父は自分の息子には言えないけど、実習生には良くしゃべる傾向がある。それが良いかどうかは別として、農家の奥様に聞いても、自分の息子より実習生の方が良く働くと言う。後を継げと息子には言いづらいが、赤の他人には言いやすい。そういうことを何回も経験しているうちに、親父も正直に息子に伝えることができるようになるのではないか? そういう効果もあると我々は見ている。


奥秋吉広 (鹿追町受入農家)
実践コースは農家に働きに行くわけでなく、現場に学びに行くことである。我々農家は学校の教室であり、学生は働きに来る労働者ではない、というのが大前提である。こちらから指示するのではなく、興味を持たせて質問させるスタンスをと りながら、大学の教室の一つが私の農場なんだよ、学校の授業の延長線上なんだよ、という意識を 持ってもらうのが良い。働くという言葉を使うことによって、先ほどの学生スライドのように「本当の大学生らしい生活…」という話が出てくる。 本当の大学生らしい生活とは夜遊びのことなのか、勉強することなのかはともかくとして、実践コースの授業を農家が先生(教授?、助手?)と して、引き受けていきたい。
短期実習に関しては、過去に新得で降りる予定の学生が乗り過ごして帯広まで行ってしまうことがあった。この時点で悪いけど学校に帰って欲しいと思った。もう少し真剣に学びに行くんだ、農家が忙しい時間を削って迎えに出ているんだ、と いうことを十分理解させて送り出して欲しい。


中野繁実 (鹿追町受入農家)
先ほどの、後継者になる、あるいは新規就農できれば良いという話は、理想であるし結果的にそうなるのは良いのだが、学生にその意識を持てというのは重すぎて、それによって実践コースの参加者が減ったり足踏みをするという話は、それは最終的な結果であって最初から言う話ではない。
実際に学生には遊び半分の部分もあり、短期の体験実習と4ヶ月の長期実習では、学生の意識も 全然違う。体験実習も1ヶ月位やれば良いという話もあったが、何が目的かを考えればどうしたら良いかは判断できる。学生も酪農家の仕事はある程度わかっているが、朝早く起きてこういう仕事をする、それを肌で感じることが体験実習では大切である。体験実習は長く1ヶ月間やって技術をつける、といったものではない。
また、学生の質の問題の話があったが、個人差があり、皆が本当に一生懸命この実習にかけてい るわけではなく、授業の一環として考えている学生は多い。4ヶ月もしたら仕事はあれもこれもやって欲しいと思うところはあるが、例えば自分の息子が他の業種で体験をやったからこれだけのことができるかと言えばそうではない。皆が皆ここまでやって欲しい、ここまでやってくれなければ困る、というのは、受け入れる側としても同一に考えるべきではなく、個人差も配慮すべきである。学生は労働力ではなく、学業の一環であり、 いわゆる大学生であるということを前提に考えることが必要である。




新名正勝 (酪農学園大学)
前半の検討会では意見交換が多少できましたが、盛り上がってきたところで終わったという感もあります。これからが本番ですので、アルコー ルも入って、忌憚の無い意見をどしどし交わして頂きたいと思います。農家さん同士がもっとやり合って、自分のところはこうだとか、そういう意見の交換が大事だと思います。
3月に7名が卒業し、1期生とあわせて12名となります。2名が大学院に残っていますが、10名が全国各地に散らばっています。二瓶さんがおっしゃられたように、できれば皆が新規就農に向かって欲しいのですが、なかなかそうはいきませ ん。もし、就職が酪農関連産業でなかったとしても、長期実習で学んだことは、その人の一生にものすごい糧になっていますし、理解のある消費者になることも大切であると思います。そこらのことも、学生を受け入れる側の受入農家さんに意思統一があった方が良いかと思っています。
これから楽しいひととき、意見交換をどんどんやっていただくことをお願いして、簡単ですが挨拶に代えさせていただきます。


奥秋吉広 (鹿追町受入農家)
私の息子は中学生で、将来継いでくれるかどう かまだわかりませんが、先ほどの話でもありましたように、自分の子供はなかなか自分で教えるこ とができません。周りの方や学校、あるいは実習先で教えてもらえると思います。しばらくの間は 学生を預かりながら、自分の子供は皆さんにお願いしたいと思います。酪農学園大学の実践酪農学コースがますます繁栄することを願って乾杯したいと思います。

 





梅津昭三 (足寄町受入農家)
実践の学生を預かっていて、就職の面で有利になることがあると学生が考えられれば、学生も縛られずに、実習をやりながら、自分の将来を考えられるのかな…と思います。3年生の後期の学生が実習しながら就職活動を考えているのを見ると、我々も力になりたいと思うし、この実習を通 して就職も有利になってくれれば良いと思いま す。そうであれば学生さんももっと集まってくる し、自分のことも考えながら、農家のことも考えられると思います。


梅津三枝 (足寄町受入農家)
自分で考えて動ける学生と、言われなければ動かない学生もいる。そのような場合、皆さんはどのように指導されていますか?。


田原直治 (鹿追町受入農家)
自発的に作業するのは良いことだが、周りの人の仕事を見て、これはやらなければいけない、これはやってはいけない、という判断は難しい。受け入れた学生は、言えばやれるし、でもそれ以上にやってもらってもちょっと困るという面もあっ た。もう少し自発的に聞きに来て欲しいなと思う場面もあった。


岩松明美 (浜中町受入農家)
学生から質問されたら教えるけど、何も聞かな ければ何も教えられない。学生には学びたければ聞いて…と伝えているが、学生によってはただ作業をこなせば良いと思っているのかと感じる場合もある。いろいろな学生がいる中で、どこまで教えたら良いのか?、逆に自分が教えられているかが評価されているようで不安になることがある。 4ヶ月の間にどこまで教えたら良いのか、このコースでは何も示されていないので、基準が欲し い。


中野繁実 (鹿追町受入農家)
受け入れた学生から年賀状が来た。直接農業に関係のある仕事には就かなかったが、実践コースを通して自分の方向性や考え方がしっかりして、その考え方の基に就職できたことがうれしい、と書かれていた。この実習は学生がこれから生きていく中でのウェイトも多いし自信にもつながったと思うので、就職が直接農業に関係なかったとしても、すごく良い成果があったと考えうれしく思った。

 


永洞忠志 (浜中町受入農家)
色々話を聞いて、幸いなことに、うちに来た学 生は他の学生より良いのではないかと思った。すごく酪農をやりたという気持ちで来る学生は、それなりにやるでしょうし、授業の一環として経験を積みたい学生は、それなりに何かを掴んでくれれば良いと思う。




高橋圭二 (酪農学園大学)
今日はいろいろと、農家の方々・農協の方々にご意見いただき本当にありがとうございました。 4月から学生を送り出すときの参考にさせて頂きたいと思います。今まで実数で24人、のべ44人の学生がお世話になりました。4月からまた8人の学生がお世話になります。今まで以上に暖かい目でご協力頂きたいと思います。大学側も心配しながら送り出していますが、農家さんが学生のことをよく理解されていると認識することができま した。お互いに学生を育てて、北海道酪農に必要な人材育成を担っていきたいと思います。




上記のほか、農家間による個別討議もさかんに行われました。受け入れた学生に対する激励を含 めて、学生の個人情報に関わる討議内容は、本項では割愛させていただきました。
 



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