実践酪農学コース担当教員から


実践酪農学コース担当教員から
実践酪農学コースがスタートして








酪農学科 家畜管理学 教授 干場 信司
干場 信司
 
10年程前に、デンマークの王立農業科学研究所で上席研究員をしていらした高井さんを1年間招へい 研究者としておいでいただき、研究・教育を共にした。その時に高井さんから、デンマークにおける農学者の養成システム(国民高等学校)を詳しく教えていただいた。それ以前に聞いていなかったわけではなかったのだが「やっぱり、これだ!」と改めて実感した。その後、デンマークを訪れ、高井さんに国民高等学校をご案内していただいた。高井さんの日本の農業教育に対する熱い想いとご協力に心から感謝申し上げる。
長い検討・準備の期間を経て、2004年度から「実践酪農学コース」はスタートしたが、この新しい教 育システムをどのように表現してよいのか迷った。迷った挙げ句、実学が座学の間に挟み込まれているので「サンドイッチ方式」と言ってみようと思いたった。それでも、下世話な言い方かなと心配していたところ、どなたかから、「デンマークでも同じ呼び方をしているよ」とお聞きし、嬉しくなった。ただ、 デンマークのシステムでは、現場での実学の期間がはるかに長いのであるが。
1年前期の「実践酪農学」では、素晴らしい経営を実践されている酪農家の方々、農協等の支援組織 で働いていらっしゃる方々に「生きた現場の話」をしていただいた。学生の反応は当然ながらすこぶる良好であったが、それ以上に、自分自身がそれぞれの方々の話に感動した。
1年後期には「実践酪農学演習」で学内の先生方から、現場ですぐに使う知識や技術等を学んだ。担当して下さった先生方の熱い講義に感謝申し上げたい。
1年後期では約20名に、また、2年前期の酪農場での実践学習では5名に絞られた。この間、特に「2年前期の実践学習へ行くか、行かないか」の判断には、多くの学生が悩んだ。最終的に5人の学生が選 択してくれたわけであるが、選択しなかった学生も、どうしようか悩んだ過程の中で多くのことを学び、 その後の3年間の学生生活がより充実したものになるだろうと思っている。
2年前期を農家で過ごした勇気ある学生5人(1期生)が学んだものは、きっと言葉にはできない心 の奥に蓄積され、一生を通じて彼等の人生を支えてくれるだろう。
「わずか5人。されど5人。」彼等を通して、同期や他学年の学生が受ける刺激は計り知れない。同時に我々も(我々こそが、というべきであろう)彼等を通して、とても大切な多くのことを学ばせてもらっていると実感している。
「実践酪農学コース」への挑戦は、酪農現場からのご協力なしには考えられない。5軒の酪農家の皆様 (ご家族の皆様を含めて)に心から感謝申し上げる次第である。また、浜中町・鹿追町の農協の皆様には、このような実践教育に積極的にご賛同をいただき、また、実際の運営においても親身になってご支援をいただいている。深く感謝申し上げるとともに、今後ともご協力をお願いするものである。




実践酪農学コース担当教員から
実践酪農学コースのスタッフとして









酪農学科 実践酪農学 教授 新名 正勝
新名 正勝

 

本コースを開始して3年目を迎えようとしています。この間、一期生5名が前期農家実習を無事終え ることが出来ました。4月には平成18年度の二期生7名を送り出すことになります。また、心配の日々が始まります。
本コースは一年生前期の「実践酪農学」に始まります。優れた生産者、関係機関担当者等を講師として招き、酪農の幅広い産業特性や、それを取り巻く支援システム、多様な可能性を学ぶ授業は、一年生だけでなく自由参加した多くの学生にも生の情報と大きな刺激を与えています。また、これに続く一年 生後期の「実践酪農学演習」は、20名程に絞り込んだ農家派遣学生の候補者を対象に、学内の関係教員が学科を越えて現地対応力の向上に努めています。そして覚悟を決めた学生を農家実習に送り出すこと になります。
一期生の前期農家実習は試行錯誤の連続でしたが、派遣学生と受け入れ農家、関係機関の並々ならぬ御努力、御協力で、派遣学生はコースの狙いである実践力を見事に身につけて戻ってきました。もちろ ん、この間の教員による巡回指導や、現地で行う集中講義、インターネットを用いた教育等も見逃せま せん。
派遣学生の著しい成長は目を見張るものがあり、本コースの取組が間違っていないことを実証しました。やはり、本方式は単なる知識や技術の習得だけではなく、人格形成に効果を上げる人間教育そのものと思われました。彼らが得たものや、作り上げた地域の人々との絆は、これからどんな職業についたとしても有益な財産になると感じられました。
派遣学生の内3名がスポーツクラブに入っています。行く前はクラブ活動との葛藤がありましたが、 これを押さえて農家実習を終え帰校後クラブに復活すると、おかしなことに野球部員は技術が向上し、 水泳部員は泳ぎが早くなり、ボクシング部員は強くなっていました。多分、毎日の作業の中で筋力がつき、人間的に成長したことが精神的な強さに結びついたものと推察されました。
また、農家実習を終えて帰校した5名は、後輩と同期生達に対して2度の報告会で感想を述べました。 それぞれが体験した苦労、失敗、喜び、成果等の話しは聞く者の心を捉え、自分の大学生活の過ごし方や今後の進み方を考えたり、見直す良い機会になったように思われました(アンケート結果から)
このように、実践酪農学コースはその中心となっている農家派遣学生はまだ少ないもののその前段や途中の取組の中で多くのものを学内に持ち込み、大切な良い刺激を与えていると思います。これから、 まだまだいろんな出来事が発生し、その都度対応に追われ続けると思いますが、本コースのスタッフの一人として本システムの定着とバージョンアップに努めていきたいと思っています。




実践酪農学コース担当教員から
実践酪農学コースを担当して









酪農学科 農業工学 教授 高橋 圭二
高橋 圭二

 

2008年4月から酪農学園大学の教授となり、その年の2年生前期の実習から現地での集中講義の日程調整、担当教授の移動、現地農協の担当者との連絡調整などの事務的な対応の他、実習先農家の要望や 農家の立場で見た実習生の生活や実習状況などの聞き取り、実習生の近況聞き取りなどを担当していま す。
はじめは、熟練の新名先生から新人に替わったことに実習生も戸惑いを見せていました。また、私自 身も、どういった準備をして学生を送り出すべきなのか、4ヶ月の実習終了時に何を学生に求めるのか、 あるいは何を目標とし達成度をどのように評価するのか、といったことが疑問としてわきあがり、この コースの担当者としてつとまるだろうかと不安でした。
ようやく、2年生前期と3年生後期の実習が終了して1年間のサイクルを経験し、4月からは1年時 の実践酪農学演習から担当した学生を現地に派遣することになります。まだまだ、先の疑問には回答が出ていませんが現地への巡回を重ねる毎に現地の様子と本コースの意義がわかってきたところです。
2009年2月には派遣先の農家の方々の意見交換会を開催しましたが、我が子のようにして暖かく実習生を迎え入れていただいていることを感じました。そして、この実践酪農学の直接の教師はこうした受け入れ農家の皆さんであることを改めて理解したところです。さらに4ヶ月の実習後の学生の成長ぶりに驚き感心しています。
今後は、派遣先の農家の方々そして実習に真剣に取り組む学生に多くのことを学びながら、実践酪農 学のスタッフの一人として本コースの充実につとめていきたいと思っています。




実践酪農学コース担当教員から
巡回と生活指導を担当して









酪農学研究科 特任准教授 猫本 健司
猫本 健司

 

実践酪農学実習では主に巡回と生活指導を担当しています。実習先に比較的近い帯広市に自宅があるため、講義などで大学にいるときは別ですが、地の利を生かして何かあればすぐ実習先へ駆けつけれる よう心がけています。実習生は数ヶ月間とはいえ、普段の大学生活とは全く違った環境に行くわけですので、実習先を巡回するときには、生活になじんでいるか?、悩みや不都合を抱えていないか?、特に気を遣います。充実した実習にするためにも、まずは生活環境がしっかりしていることが大切です。
2年生の前期と3年生の後期の数ヶ月間、それぞれ異なる地域で実習するわけですが、広い北海道ではそれぞれの地域で気候や自然が大きく異なります。この実習では技術を学ぶだけでなく、地域による経営環境の違いや考え方の違いも肌で感じ取ることができます。これは将来、畜産経営や畜産に携わる仕事を志す方にとって大きな財産になります。
実習現場では学生と同じ目線や気持ちで一緒に考えることが必要であり、その上で適切なアドバイスや指導ができるよう、これからも心がけていきたいと思います。



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